21ともいき校訓「自律・共生」には、自らを律して、自身の目標に向かって計画的に努力を重ね、他者とのかかわりの中で目標を達成できるような人間になってほしい、という願いが込められています。教育方針「学び合い・助け合い・高め合いの実践」のもと、自ら学ぶ力、共に生きぬく力を育てます。東洋高等学校 校長 市川 良幸 バーチャル抜きには成り立たない現代だからこそ逆に、仮想ではない現実の世界で、喜怒哀楽をリアルに感じることが大切だと、私は思います。様々な人と出会い、様々な考え方に出会い、自らが考えるヒントにする……。 高校で習う授業内容の多くは、無料の動画配信でも学習することができます。わざわざ登下校に時間を割いて、授業料を払って、学校に通う意味はないと考える人もいるかもしれません。しかし、私は、人との関わりや身体を使うリアルな経験こそが、人が生きて行くうえでの「平衡感覚」のようなものを育てているように思います。 人と関わり合うことによって生まれるつらさや悲しみもあります。しかし、つらさも悲しみも背負って生きて行くのが、現実の世界です。ボタン一つで「リセット」できるシステムは、現実の人生にはありません。苦労することも多い日常の中で、少しでも有意義な人生を送りたいと思うからこそ、私たちは学び、考え、行動します。 高校では、授業を通して多くの知識が与えられます。しかし、高校は、機械的に知識を生徒にインストールする場所ではありません。知識は、将来をよりよく生きるための力になりますが、その知識を活かすことのできる知恵がなければ、宝の持ち腐れで終わってしまいます。 学んで手に入れた知識をつなげ、応用し、自身のため、周囲のために活かすことのできる知恵を現実の体験から身に付けてこそ、知識は生きるための血肉となります。 中学生の皆さんが生きて行くこれからの世界が、今より生きやすい世界になるかどうか。現在世界で起きている多くの紛争を見る限り、残念ながら楽観的な答えを出すことができません。ごく一握りの大富豪が資産を増やし続ける一方で、50億人が以前より貧しくなっているという報告もあります(2024年1月16日発表、国際NGO「オックスファム(Oxfam)」の報告書より)。富める者はますます豊かになり、その日を生きることすら厳しい人たちが増え続ける世界……。強者の論理が優先されるこの世界で、「一人勝ち」の魔力を追い求める人ではなく、「世界中の笑顔こそが自分を幸せにする」と実感してくれる人を増やすために、「教育」の力が必要なのだと私は思います。 未来を生きる皆さんには、「知恵のある人」、「思いやりのある人」、「挑戦する人」になってほしいと思います。そのような人を育てるために、東洋高等学校は、知識だけではなく、知恵を育む様々なきっかけを与え続ける場所でありたいと思っています。 ここで学んだすべての生徒が、将来、自分自身と周囲の人たちを笑顔にする人になってくれることが、東洋高等学校の願いです。自律・共生(共生精神)学び合い・助け合い・高め合いの実践校 訓教育方針(学・助・高・実)未来を生きる中学生の皆さんへ 中学生のころ、はじめて2泊3日の一人旅に出て以来、私は一人旅が大好きになりました。ルートや行き先を自分で決め、そのすべての責任を自分で負わなければならない3日間。不安や苦労はありましたが、中学生の私にとってはそれを上回る刺激に満ちた3日間でした。 旅は色々な風景を見せてくれます。色々な人と知り合うきっかけを与えてくれます。色々なことを考える機会を与えてくれます。そのような環境に身を置くと、自分の脳が、身体が、はつらつとしていることに気づきます。未知の世界への憧憬が、今でも私を旅へと向かわせます。
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