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あなただけの「解」を
みつける場としての東洋高等学校


東洋高等学校 校長 石井 和彦

 あるジャーナリストが、恐竜の絶滅した原因を考察する文章の中で、変化の少ない時は特定の分野に強みを持つ存在=スペシャリストが優位で、変化する状況のもとでは広い範囲に対応できる存在=ゼネラリストが優位に立つ、という意味のことを書いていて、なるほどなあと納得した覚えがあります。恐竜の生息に適した環境では、恐竜が他の生き物を圧倒して大型化・多様化できたが、環境が急変したとき(隕石の衝突、気温の低化など)にはその変化に適応できず滅んでしまう……
 現代はまさに変化の時代で、たとえばAI(人工知能)の発達によって機械にとって代わられる職業・職種がいくつもあると言われています。ではこれからの時代、いわゆる「なんでも屋」が強いのかというと、そういうレベルの問題でもないように思えます。
 コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻に象徴されるように、先行きが見通せない時代に私たちは生きていますが、それだけではなく、私たちは過去のモノサシに囚われているように思えてなりません。過去のモノサシとは、たとえば「高度経済成長」であったり、そもそも私たちが「経済的に発展するのが当然」といった考え方です。もちろん経済の問題だけでなく、政治や文化、技術などの面でも同様です。今までこういうものの見方・やり方でやってきてうまくいっていたんだから、その通りにやれば失敗しないだろう、という発想は通用しないことがはっきりしています。
 言い古された表現かもしれませんが、一人ひとりが自らの生き方を創造し、実践するべき状況が迫ってきているように思えてなりません。これまで「個性の尊重」、「多様性」という言葉が世の中のあちこちで使われてきました。現在は、その言葉の中身を自分たち自身の生き方に反映させるべき時代となっています。「自分勝手」、「自己中心」などとは違います。自分と違う他者を認め、敬意を持ち、自分の志向や適性を活かしつつ他者と協同し、失敗やトラブルも含めて、生きたい人生を探る。そのためには、自分独自の価値観=モノサシを形作る必要があります。誰かが「こういう人生が幸せなんだよ」と言っても、その言葉に惑わされないために。
 東洋高等学校は、教科の勉強や行事、課外活動などを通じて、そういったことをトレーニングする場の一つだと考えています。同じ志を持つ仲間や先生方とときには協力し、ときには競い合いつつ、自分の送るべき人生を探してみませんか。