MESSAGE

世の中を見据えて、自分を見つめて、
可能性を広げてほしい


東洋高等学校 校長 石井 和彦

 中学生の皆さんにとって働く、とか仕事、といった言葉は実感のないものかもしれませんが、少し前に、AI(人工知能)の発達により多くの職業・職種がなくなる、というニュースが話題になっていました。電車運転とか経理事務などがその候補の上位に挙がっていたようです。最近の「13歳のハローワーク」というサイトによると、人気職業ランキングでは1位ユーチューバー、2位プロスポーツ選手、3位イラストレーター、4位医師、5位外交官……と並んでいます。「13歳」となっているので、中学1年生が対象なのでしょうが、率直に言ってかなり夢のある職業名が並んでいる、という印象です(また、あくまで「人気」なので、自分が就きたい職業とは限らないかも)。高校生になると、エンジニア、プログラマー、公務員、看護師、保育士、薬剤師……といった職業が上位にランクされ、「13歳の……」よりかなり現実味を帯びている感じです。
 ある仕事が生まれる、あるいは逆になくなる、というのは社会の在り方を反映しているわけで善し悪しではありません。私が幼い頃は鉄道踏切の遮断機を上げ下げする仕事があり、町には「牛乳屋さん」というお店がありました(ちなみに地域は船橋市の西のはずれ、時代は総武線に茶色い車両が走っていたころです)。そういった仕事が将来、なくなってしまう、などということは考えてもみませんでした。
 職業・職種だけではなく、働き方や雇用形態も大きく変わりつつあります。社会状況の大きな変わり目を私たちが迎えているからでしょう。環境やエネルギー、食料や人口など様々な問題が複雑に絡み合って、先の見通せない状況です。
 日本独特の「終身雇用」「年功序列」、つまり学校を出てから入った会社に忠誠を尽くしてがんばれば、年齢に応じた肩書と給与と、定年までの雇用を保証してくれるシステムも消えつつあります。
 では、これから社会に出ていく人に何が必要か。ひとつは、「学ぶ力」だと思います。今後は社会の変化がさらにめまぐるしくなるでしょう。また同じ仕事を続けるにしてもその内容が変わっていくことも考えられます。前の日と同じことが明日も続くとは限りません。状況を把握し何が必要かを判断し、情報を得る、技術を身につけるといった対応が必要です。そうした対応の基本には「学ぶ力」があります。
 もうひとつは、「人間関係力」です。人との関わりを創造する力。テレワークが多くなり、連絡方法が多様化しても、人と人の関係は無くなりません。むしろ逆に人間関係は重要な意味をもってくると思います。どこかで、誰かと、何らかの形で繋がっています。つまり「共生」です。人あしらいがうまい、ということではありません。相手に敬意を持ち、自分の考えや想いを伝え、相手を自分と同じように考えられること、そして力を合わせて課題に向かうこと。これが基本だと思います。
 変化や変革は見通しが利かないことから不安を覚えますが、逆に自分の個性や可能性を生かすチャンスでもあります。まずは、中学生から高校生になる、という「変化」を前向きに捉えて、皆さん自身の成長の機会にできるようにがんばってください。