校長贅言2―5 一番暑くて、温かかった夏の日(全国高等学校野球選手権大会 東東京大会観戦記)
東京に今年初の「熱中症警戒アラート」が出された7月6日(日)、神宮球場で行われた野球部の夏の大会の応援に出かけました。
初戦の相手は都立墨田工科高校です。予定時刻の11時を25分過ぎたプレイボール、時折雲が日差しを遮るものの、強い日差しの照りつける中での試合となりました。
後攻の東洋高校は、初回、先頭打者に対して入江君がデッドボールを出してしまいます。その後は2アウトまで追い込んだものの、4番打者にタイムリーを打たれ、1点を先制されてしまいました。その裏の攻撃では、ランナーを3塁まで進めたものの、得点することができません。2回、相手に1点の追加点を許し、さらに3回、1アウトからデッドボールで出塁を許し、タイムリーヒット、キャッチャーのパスボールなどで2点を計上してしまいました。その裏も相手のエラーでランナーを出していながら、点には結びつかずに攻撃終了。1点が遠い試合です。
4回、相手の先頭がヒットで出塁。それをきっかけに1点を取られ、0-5となったところでピッチャーが入江君から井澤君に交替しますが、4回終了時点では0-7と苦しい展開になってしまいました。ようやく5回表を三者凡退にしたものの、その裏、こちらも三者凡退。良いアタリはあるものの、相手の正面に飛んでしまうなどの不運もあり、なかなか点が取れません。
5回終了後の給水時間を挟んで、6回からピッチャーが背番号1の塚原君に変わりました。しかし、その回にも3点を取られ、0-10に。その裏、0点で抑えられてしまったらコールドゲームになってしまうという東洋の攻撃の前に、「選手治療中」という中断が入り、相手のショートとピッチャーが交代します。ようやく守備に着いたと思った途端、レフトも交代することになりました。熱中症で足がつるなど、結局相手チームの選手交代が次々とコールされます。
そのような中、東洋は先頭打者の比嘉君がツーベースヒットで出塁します。ようやく反撃開始、流れが東洋に傾いたと思った直後、再びコールが響き、相手のセンターも熱中症で交代することになりました。
東洋高校は大差で負けているものの、良い流れをつかむ絶好の機会というときに中断を余儀なくされてしまいました。しかし、東洋の応援席からは、炎天下に全力を尽くした相手の選手たちの健闘を称える「墨工頑張れー」という多くの声援と拍手とが送られました。ざっと見たところ、相手チームの応援団の3倍ほどの応援団がいる東洋高校のスタンドの全員が、交代せざるを得ないところまで必死に戦った相手選手にエールを送り続けます。
勝敗を抜きにして、一生懸命戦っている相手に心からの声援を送ることのできる東洋高校応援席。東洋高校の生徒、保護者、関係者全員が相手選手を思いやり大声援を送っているその場にいて、私は東洋高校の一員でいられることを心から誇らしく思いました。
試合再開の直後、塚原君が3ベースヒットを放ち比嘉君が生還、ようやく待望の1点をもぎ取ることができました。その後は神戸君の内野ゴロの間に三塁の塚原が生還したものの、後が続かずこの回2点を返すに留まりました。7回は、相手の攻撃を三者三振に切って取り、その裏1アウトから高村君がファーボールで出塁。2アウト2塁から柳井君がタイムリーヒットで一人を返し3点に。しかし、反撃もここまで。結果は7回3-10、コールドゲームでの敗戦となってしまいました。
その日の「高校野球ドットコム」の記事には、「7回の攻撃は、3者三振(註:相手校のこと)。完全に東洋に試合の流れが傾いていった。それでも、何とか福島投手が1失点で堪えて何とか7回コールドゲームが成立した。もしここでコールドゲームにしておかなかったら、その先試合はどうなっていたかわからない。」という記述もありました。結果的には大差で負けてしまいましたが、その点差を感じさせない素晴らしい試合だったと思います。
選手をはじめとする野球部の皆さんとそのご家族の皆様、吹奏楽部、ソングリーダー部の皆さん、東洋高校の応援に駆けつけてくださった全ての皆様、あの暑いスタンドで「温かい」気持ちを共有させてくださった全ての皆様に感謝申し上げます。
感動を、どうもありがとうございました。