校長贅言2-9 夏の終わりの研修会
夏期講習Cタームが終了した翌日の8月30日(土)、後期始業式を控え、東洋高校内では二つの研修会が催される予定「でした」。
この日は、午前中を職員会議や学年会議等に充て、翌週から始まる後期に備えるとともに、午後1時より、神田消防署から消防職員の方々をお招きしての救急救命講習会を実施する予定でした。専任・常勤教職員を二つのグループに分け、さらにそれぞれのグループを小人数の班に編成し、心肺蘇生法の実践、AEDを使用した実践を伴う研修です。東洋高校では、毎年実施している研修ですが、実際にAEDに触れるたびに「躊躇せずにAEDを使用すること」を身体に覚え込ませることになります。本校では各階にAEDが設置されていますが、実際に使えなければそれらは「飾り物」で終わってしまいます。この研修は、AEDを「頭で理解している」装置ではなく、「実際に使う」道具に変えてくれます。日本全国、多くの学校が取り組んでいる救急救命講習だと思うのですが、AEDに触れ、人命を救う行動を毎年上書きすることは絶対に必要だと私は思っています。「知っているから大丈夫」ではなく、すべての教職員が「いつでも使える」と胸を張れることが、安心安全を第一とする学校現場には必要だからです。
ところが……。当日、神田消防署より「緊急出動の要請が入ったので、講習会を延期してほしい」という連絡が入りました。実際の人命救助は何物にも優先しますので、当然のことですがこの講習会は延期されることとなりました。今年入職された先生方も4月1日にAED講習を受けていますので、もちろん全ての専任・常勤教職員がAEDを正しく使うことはできるのですが、「再実習・再確認」の機会は持ち越しとなってしまいました。
同じくこの日、安田教育研究所代表の安田 理(やすだ おさむ)先生をお招きし、「これからの時代」と「これからの東洋高校」とを考えるヒントになるお話をお聴きする機会を得ました。
様々なメディアでの情報発信や執筆などを精力的にされている安田先生とは、これまで本校の石井理事長がやり取りをさせていただいており、安田先生から理事長に送られてくる「中学・高校教育」会員情報誌・ビジョナリーの巻頭文を、私自身も毎月楽しみにしていました。
当日の安田先生のお話は「最近の高校入試事情」から始まり、昨年度東洋大学で実施され話題となった「年内学力入試」などの「今後の大学入試」に関する動きなどを踏まえ、私たち教員が考えておかなければならないことなどに向かいました。「年内入試が主流となる」という報道は「中身」を確認すべきであるということや、基礎学力、特に読解力と文章力とをしっかりと身につけさせなければならないなどということをお話しいただき、どれもそれぞれの教員が日ごろから考えていることでありながら、データを踏まえた説得力のあるお話に、「生徒たちのために何をしなければならないか」ということを再確認する時間となりました。
また、2040年はどのような時代になっているのかということを考えたうえで、これからの学校の在り方や全日制高校の存在意義などに関するお話をいただきました。
今後さらにカリキュラムを充実させ、また優れた教材を使って生徒を難関大学に合格させたとしても、その生徒が大学で「何をやったらいいかわからない」という学生になってしまったとしたら、その合格は「生徒のための」合格ではありません。生徒たちが大変革の社会を生き抜くにはエネルギーや志が必要であり、そのエネルギーや志は、私たち教員自身の情熱、エネルギー、志から生まれるという言葉をお聞きし、多くの教員が生徒に向き合う決意を新たにしました。
最後に俳優・高倉健のエピソードを紹介され、「先生は拍手される人ではなく、様々な機会を見つけて、目の前の生徒たちに拍手を送る人であってほしい」という言葉で締め括られました。研修会終了後も、質問のために残る教員がおり、安田先生は誠実に、様々な質問に応えてくださいました。
当たり前のことですが、生徒それぞれには個性があり、教育は決して「タイパ」で評価できるものではありません。未来を背負う生徒たちそれぞれの幸せを念頭に置いたとき、それぞれの教員が「まだまだできることがあるのではないか」と考えるきっかけになった、夏の終わりの研修会でした。