校長贅言2-13 宇宙人は存在するのか? ~JAXA 宮里氏による講演会が実施されました
東洋祭が終わって間もない10月25日(土)、三燦会(東洋高校父母の会)主催による講演会が実施されました。生徒たちのキャリア教育の一環として、毎年三燦会役員の皆様のお力で開かれている講演会に、今回はJAXA(宇宙航空研究開発機構)広報部の宮里光憲(みやさと みつのり)氏にお出でいただき「生活に役立っている宇宙開発と宇宙開発の最前線」という題目でお話をいただきました。宮里氏は長年JAXAに勤務されており、これまで多数のロケットの打ち上げに従事されているという経歴をお持ちの方です。
当日は物理学や宇宙に興味のある生徒を中心に、180名ほどがオリエントホールに集まり、生徒会執行部の生徒たちの司会で午後2時より講演か始まりました。
138億年前のビッグバンからお話は始まり、ロケットについて、人工衛星について、宇宙飛行士や将来の宇宙開発についてなど、硬軟織り交ぜた興味の尽きない話が宮里氏の軽妙洒脱な話ぶりにのって次々と繰り出され、あっという間に2時間が過ぎてしまった講演会でした。
この講演会に先立って、全校生徒から宮里氏に投げかける様々な質問が寄せられたのですが、その中に「宇宙人はいると思いますか?」というものがありました。宮里氏のお話によると、地球型生命が居住可能なハビタブルゾーンと呼ばれる天文学上の領域の中に、2025年9月時点で6007個の太陽系外惑星を確認しているそうで、「あくまでも私見ですが」と断ったうえで「宇宙人がいないと考える方が不自然です」と見解を示されました。ただ、「どの惑星も地球からは遠すぎるため、行って確認することができない」ということでした。そのような回答をお聞きしただけでも、これまでとは宇宙の見え方・捉え方が変わりました。
お聞きする前は難しいお話が多いのかと思っていましたが、高校生の誰が聞いても興味がわくようなお話のオンパレードでした。「宇宙飛行士になるためにはどのような訓練が必要なのか」というお話や(4127名の志願者に各種の試験・検査を課し、約1年間で2名に絞られたそうです)、宇宙ステーションでの宇宙飛行士の生活のお話、今後現実化するであろう商業用宇宙ステーションのお話など、これまで知らなかった多くのことを教えていただきました。曰く、「宇宙服の製作費用は1着1億円、それに付随する生命維持装置には9.5億円がかかる。最新の宇宙服はプラダがデザインを担当している」、「宇宙食では濃い味のものが好まれる」、「トイレで出した小水は、ろ過の後再利用されてコーヒーを淹れるときのお湯になる」、「宇宙空間で生活をしていると、身長は2~5㎝伸び、ウエストや足首は細くなり、体重も3~5%減るが、骨密度は骨粗しょう症患者の10倍の速さで低下する」など、無重力空間で生活するということが、どれだけ地球上での生活と異なるのかということを考えさせられました。
また、建築用として使われている免震用積層ゴムや車のエアーバッグ、カプセル型内視鏡や3次元コンピューターグラフィック、カーナビゲーションシステムなど、現在使われている多くのものが宇宙開発の工夫の中で生まれたのだということもお聞きし、宇宙開発には様々な可能性が秘められているということにも気づかされました。
書ききれないほど多くのお話をお聞きしたなかでも、今後建設されるはずの宇宙ステーションの話や、さらに加速化する宇宙旅行の話などは、人間の活動領域が数年単位で確実に変わって行くことを示唆していました。現に日本の大手建設会社も直径140m・客室数46室の宇宙ホテルの建設プロジェクトを進めているというお話をお聞きし、「宇宙への移住」=「夢物語」ではないということを実感しました。
お話の後の質疑応答では、生徒から「宇宙エレベーターの建設は可能でしょうか」という質問があり、宮里氏は、「理論的には可能です。人間が想像できるものは、必ず現実化することができます。昔から考えてみたら「絶対に無理だ」と思えるようなことを、これまで人間は実現させてきました。未来は皆さん(生徒たち)が切り開くものであり、現実に直面した際に「もう無理だ。もう限界だ」と思った後の一歩のことを「努力」と呼ぶのです」と話してくださいました。
講演会の最後には、三燦会によるプレゼント抽選会もあり、おにぎりやグミ、チョコレートケーキやバニラアイスなどの宇宙食が当選者に配られました。この講演の翌日、10月26日には国際宇宙ステーションに物資を届けるH3ロケット7号機が種子島より打ち上げられるというタイムリーなお話もあり(打ち上げは成功しました)、打ち上げられたロケットには冷蔵庫が積まれているので、今回生徒がプレゼントされた宇宙食のようなものではなく、普段食べているようなアイスクリームも宇宙に持って行かれるようになるというお話も出てきました。現在地球上で生活しているのと何ら変わらない生活が宇宙で送れる日が来るのは、思っているよりも近い将来かもしれません。これは、様々な宇宙開発に携わってきた人たちが、「無理だ」と諦めることなく、その研究を進めてきてくれたからにほかなりません。
遠い場所、自分には無縁の場所だと思っていた宇宙が、身近に感じられるようになった講演会でした。




